LCAでわかる金属AM・補修の環境価値|比較に必要な5つの視点

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスに関わる資源の投入や排出を整理し、環境への影響を評価する方法です。金属AMによる部品補修では、材料や電力に加え、補修後の品質と使用期間を含めて、新品交換との違いを検討することが重要です。

摩耗・損傷した箇所だけを修復できれば、部品全体の作り直しを減らせる可能性があります。一方、補修にも前処理、造形、仕上げ加工、検査、輸送などが必要です。

金属AM補修の環境価値は、同じ機能を同じ期間提供する条件で、新品交換と比較することで評価できます。 本記事では、そのために確認したい5つの視点を紹介します。

ライフサイクルアセスメントとは?金属AMの環境評価に役立つ基本の考え方

ライフサイクルアセスメントの基本的な枠組みは、評価の目的と範囲を決め、投入物・排出物のデータを集め、環境影響を評価し、その結果を解釈するというものです。

ISO 14040はLCAの原則と枠組みを、ISO 14044は要求事項と指針を示しています。評価結果だけでなく、その前提や限界を明確にすることも重要な要素です。

金属AMは、材料を付加して形状を作る製造技術です。補修では、既存部品の一部を残しながら、必要な箇所に材料を付加する使い方ができます。

ただし、使用材料が少ないことだけで、環境負荷全体が小さいとは判断できません。どの材料を使い、どの工程を通り、どれだけ使い続けられるかまで検討する必要があります。

LCAで環境価値を考える金属AM補修のイメージ。金属シャフトへの局所的な肉盛りと仕上げ後の部品
金属AMによる局所補修のイメージ。AI生成画像であり、実際の施工事例や環境性能を示すものではありません。

金属AM補修のライフサイクルアセスメントで確認したい5つの視点

1.評価する範囲を揃える

まず、新品製造と補修のそれぞれについて、どの工程を評価に含めるかを決めます。

評価範囲対象の例判断できること
Gate-to-gate特定の製造・補修工程への投入から工程完了まで工程内の負荷と改善点
Cradle-to-gate原材料の採取・製造から加工、後処理、出荷まで出荷までに生じる負荷
Cradle-to-grave原材料から製造、使用、保守、廃棄・再資源化まで使用期間を含む全体の負荷

たとえば、補修側は造形中の電力だけ、新品側は材料製造から輸送まで含めて比較すると、評価範囲が揃いません。

補修では、受入検査、洗浄、損傷部の除去、肉盛り、仕上げ加工、必要な熱処理や検査、返送などが候補になります。新品製造側についても、比較に必要な工程を同じ考え方で整理します。

2.材料・電力・後処理をまとめて確認する

金属AM補修の評価では、付加した金属の重量に加えて、その材料の製造や補修工程で使う電力、ガス、消耗品なども確認します。

また、造形条件を変えて電力消費を抑えても、後加工や再作業が増えれば、全体の負荷が増える可能性があります。各工程のつながりを捉えることが大切です。

整理したい情報確認する内容の例
材料投入量、部品に残る量、除去量、廃棄・再資源化の扱い
エネルギー造形、加工、熱処理などの使用電力と電力の排出原単位
補助材シールドガス、洗浄剤、加工用消耗品など
品質に伴う追加工程再加工、再検査、不合格品への対応
輸送回収・返送の距離、重量、輸送手段

最初からすべてを精密に測定できない場合でも、計測値と推定値を分けておけば、追加で調べるべき項目が見えてきます。

3.新品と補修品の機能・品質を揃える

比較の基準となる「何を、どれだけ提供するか」を機能単位と呼びます。

補修と新品交換を比較する場合、「部品1個」だけでは十分でないことがあります。寸法、強度、耐食性、耐摩耗性など、用途に必要な性能が異なると、果たせる役割も変わるためです。

たとえば、比較条件を「所定の運転条件で、要求性能を満たす部品機能を一定時間提供する」と置けば、その期間に必要な製造・補修・交換を比較しやすくなります。

これは評価設計の例であり、実際の条件は対象部品と用途に合わせて決めます。補修後の品質を裏付ける検査や試験は、環境評価の前提を支える情報にもなります。

4.補修後の寿命と必要な交換回数を考える

補修工程の負荷が小さくても、補修後の使用期間が短く、何度も再補修が必要になれば、累積の負荷は変わります。

新品交換案と補修案を比較する際には、同じ評価期間で、それぞれ何回の製造、補修、輸送、検査が必要になるかを確認します。

アークを熱源とする金属AMで金型インサートを補修した公開研究では、特定の条件下で、新品交換に対するライフサイクルのエネルギー消費・カーボンフットプリント削減の可能性が報告されています。ただし、その結果を異なる部品や工程へそのまま適用することはできません。研究の概要はトリノ工科大学の公開情報で確認できます。

補修による寿命延長を評価するには、製造・補修の負荷に加えて、使用条件と交換頻度を比較条件に組み込む必要があります。

5.不確実性を明示し、条件を変えて確認する

補修後の寿命、将来の補修回数、外注工程の消費電力など、評価時点では確定できない情報もあります。

その場合は、寿命を短め・標準的・長めに設定するなど、条件を変えて結果を確認します。これにより、どの前提が結果を左右するのか、どの条件なら補修の環境上の優位性が維持されるのかを検討できます。

評価結果を説明するときは、次の情報を併記すると、読み手が数字の意味を理解しやすくなります。

  • 比較対象と、満たすべき機能・品質
  • 評価範囲と、含めなかった工程
  • データの出典、対象期間、計測値と推定値の区別
  • 使用期間や補修回数などの仮定
  • 条件を変えた場合の結果の変化

金属AM補修のライフサイクルアセスメントに関するよくある質問

金属AM補修なら、必ず環境負荷が下がりますか?

必ず下がるとは限りません。新品製造と補修の工程、材料、電力、輸送、補修後の使用期間によって結果が変わります。部品ごとに比較条件を設定する必要があります。

CO₂排出量を計算すれば、ライフサイクルアセスメントとして十分ですか?

温室効果ガスの評価は重要ですが、それだけで環境影響全体を評価したことにはなりません。気候変動への影響だけを扱った結果なのか、ほかの環境影響も扱ったのかを明確にすることが必要です。

工程の電力データだけでも役立ちますか?

役立ちます。消費電力の把握は、工程改善の出発点になります。ただし、材料や後処理、輸送などを含めていない場合、その数値だけで部品全体の環境優位性を判断することはできません。

補修品を新品と比較するとき、何を揃えるべきですか?

要求機能・品質、評価期間、使用条件、評価範囲を揃えます。新品と補修品で寿命が異なる場合は、同じ期間に必要な交換・補修回数を考慮します。

プロメシアンが考える、品質と環境価値をつなぐ金属部品補修

プロメシアンは、金属AMを活用した部品補修・再生に取り組んでいます。サービスの概要は、AM補修・再生サービスをご覧ください。

補修を選ぶ際には、品質、コスト、納期とともに、環境面でも判断できる情報があることが望ましいと考えています。そのためには、施工条件や材料使用量などの工程情報と、品質を裏付ける記録を結び付けて検討することが重要です。

金属部品の摩耗・損傷に対して補修を検討されている場合は、材質、寸法、損傷状況、使用環境、要求品質、希望納期などを添えて、プロメシアンのお問い合わせ窓口へご相談ください。

本記事は公開情報に基づく一般的な解説です。プロメシアンの個別サービスについて、ライフサイクルアセスメントに基づく環境負荷削減率を算定・検証した結果を示すものではありません。

参考資料

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