非破壊検査用試験体の製造技術で初の特許取得

プロメシアン株式会社は、欠陥を含む非破壊用試験体の製造につながる情報処理技術について、当社初となる特許「情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム」(特許第7911461号)を取得しました。

本特許は、ワイヤーを材料として金属を積層する指向性エネルギー堆積法(DED)方式の3Dプリンターにおいて、造形条件を制御し、対象とする位置に特定の欠陥を形成するための制御情報を生成する技術です。

試験体は、検査装置や検査条件、検査手順、技術者の技能について、「見つけるべき欠陥を本当に見つけられるか」を確認するために使用されます。

欠陥を意図的につくる技術は、品質を下げるためのものではありません。検査の信頼性を高め、将来の欠陥の見逃しを減らすための技術です。

非破壊評価は、実施するだけでは十分ではない

非破壊評価とは、製品や構造物を壊すことなく、表面や内部のきず、不連続部、異物などを調べる技術です。

発電設備、船舶、航空宇宙機器、圧力設備、橋梁をはじめ、安全性や安定稼働が重視される幅広い産業で利用されています。

ただし、検査装置を対象物に当てれば、必ず正しい結果が得られるわけではありません。

検査結果は、装置の性能、検査条件、材料、形状、欠陥の位置や方向、評価手順、そして検査技術者の技能などに左右されます。

そのため、非破壊評価では次のような確認が必要になります。

  • 検査装置は、対象とする欠陥を検出できるのか
  • 設定した検査条件は適切か
  • 作成した検査手順に見落としはないか
  • 検査技術者は、信号を正しく検出・評価できるか
  • 新しく開発した解析技術は、既存の方法より有効か

これらを評価するには、あらかじめ欠陥の情報が分かっている試験体が必要です。

欠陥の位置や種類が分からない試験体では、検査で何も検出されなかった場合に、「欠陥が存在しなかった」のか、「存在していたが検出できなかった」のかを区別できません。

既知の欠陥を含む試験体があれば、検査結果と正解を比較できます。これによって初めて、検査装置、検査条件、手順、解析方法、技術者の技能を客観的に検証できます。

従来の試験体製造が抱える課題

非破壊評価の研究開発や教育では、目的に応じた欠陥を含む試験体が必要です。

ところが、実際の損傷や製造不良に近い欠陥を、狙った位置や条件で作り込むことは簡単ではありません。

従来の試験体製造は、熟練技術者の経験や手作業に依存する部分が大きく、製造に時間と費用がかかる場合があります。同じ種類の試験体を複数製造することや、製造者が変わっても同等の特徴を持つ試験体を作ることにも難しさがあります。

さらに、試験体製造を担ってきた技術者の高齢化と技術承継も重要な課題です。

機械加工によって穴や切り欠きを設けた試験体も広く利用されています。ただし、こうした人工的な形状は、実際の溶融・凝固過程で生じる気孔、融合不良、介在物、割れなどとは、形状、界面、周囲の金属組織が異なる場合があります。

非破壊評価技術をさらに高度化するには、実際の製造現象に近い状態を持つ試験体を、必要な条件に応じて製造できる技術が求められます。

造形工程そのものを制御する

今回取得した特許の特徴は、完成した金属造形物に後から穴や切り欠きを加えるだけではなく、金属を積層する造形工程そのものを制御する点にあります。

対象となるのは、ワイヤーを熱源によって溶融し、金属を積層するワイヤーDED方式です。

本特許では、欠陥の位置、大きさまたは形状などの仕様と、対象とする欠陥の種類に基づき、3Dプリンターの造形パラメータを変化させる制御情報を生成します。

制御対象として、次のような造形条件が挙げられています。

  • エネルギー入力量
  • 材料供給量
  • 造形経路の間隔
  • 積層高さ
  • 加工位置へ供給するガスの条件

これらを単独または組み合わせて変化させることにより、気孔、空洞、介在物、未溶融、ビード間・層間の融合不良、割れなど、異なる種類の欠陥を対象とした試験体製造につなげます。

造形条件と発生した欠陥、さらに検査結果をひもづけて蓄積することで、これまで熟練者の経験に依存していた試験体製造を、データに基づいて管理できる可能性があります。

赤外線(IR)カメラによるプロセスモニタリングの様子 ワイヤーDED造形中の赤外線プロセスモニタリング|製造条件と非破壊検査結果をひもづける品質データの一例

この技術が提供する5つの価値

1.検査装置と検査条件の性能を検証する

欠陥の位置や種類が分かっている試験体を検査することで、装置や検査条件が対象とする欠陥を検出できるか確認できます。

超音波探傷試験や放射線透過試験などについて、材料、厚さ、欠陥の方向などに応じた検査条件を比較・検討する用途が想定されます。

2.検査手順の妥当性を確認する

実際の製品や設備に非破壊評価を適用するには、対象物に応じた検査手順を作成する必要があります。

試験体を用いて検査を行うことで、探触子、周波数、走査方法、照射条件、解析方法などを比較し、検査手順の妥当性を確認できます。

3.技術者の教育と技能訓練を支える

既知の欠陥を含む試験体は、検査技術者の教育にも活用できます。

欠陥の種類や検出難易度が異なる試験体を用意できれば、初学者の訓練から、より高度な検出・評価技能の確認まで、段階的な教育につなげられます。

4.非破壊評価技術の研究開発を加速する

新しい検査装置や解析方法を開発しても、検証に適した試験体がなければ、性能を評価できません。

目的に応じた試験体の製造条件を整備することで、大学、研究機関、検査会社、装置メーカー、製造事業者による研究開発を支援できます。

将来的には、画像解析やAIを利用した欠陥判定技術の検証データとしての活用も考えられます。

5.熟練技能を製造データとして継承する

造形条件、材料、欠陥の特徴、検査結果を一体的に記録することで、試験体製造に関する技能を再利用可能なデータへ変換できます。

これは、熟練技術者を置き換えることが目的ではありません。熟練者が持つ知識や判断を次世代へ継承し、より多くの技術者が利用できる形にするための取り組みです。

欠陥をつくる目的は、見逃しを減らすこと

プロメシアンが目指しているのは、欠陥そのものを増やすことではありません。

検出すべき欠陥を確実に検出できる技術を育て、非破壊検査の信頼性を高めることです。

安全性が重視される産業では、「検査を実施した」という記録だけでなく、「その検査方法には、対象とする欠陥を検出できる能力があるのか」を説明できることが重要です。

その説明を支えるものの一つが、欠陥の位置、種類、製造条件が明らかな試験体と、それにひもづく製造・検査データです。

プロメシアン株式会社は、本特許を起点として、まずは研究開発用途や検査技術の検証用途を中心に、試験体の製造技術を確立していきます。

今後は、材料ごとの製造条件、試験体の再現性、欠陥寸法の評価方法、検査結果との対応関係を検証し、非破壊評価会社、研究機関、装置メーカー、教育機関などとの共同開発を進める方針です。

意図的に作り込んだ欠陥を、重大な欠陥の見逃しを減らすために役立てる。

この技術を、検査の信頼性と産業の安全を支える新しい基盤へ育てていきます。

共同開発・試験体製造のご相談

プロメシアン株式会社では、次のようなテーマに関するご相談を受け付けています。

  • 検査技術の検証に使用する試験体
  • 新しい検査装置・解析方法の研究開発
  • 検査手順の開発・比較評価
  • 材料や製造条件ごとの欠陥検出性評価
  • 技術者教育に使用する試験体
  • 欠陥を含む金属積層造形物の共同研究

具体的な材料、形状、対象とする欠陥、検査方法などが決まっていない段階からでもご相談いただけます。


特許情報

  • 特許番号:特許第7911461号
  • 発明の名称:情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム
  • 特許権者:プロメシアン株式会社
  • 発明者:古賀洋一郎
  • 登録日:2026年8月18日
  • 特許公報発行日:2026年8月26日
  • 特許情報:IP Force掲載ページ

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