AM製造工程を「追跡できるデータ」に変える|プロセスモニタリング・トレーサビリティ・DX

QRコード・プロセスモニタリング・Build IDによる品質証跡基盤の構築

プロメシアン株式会社では、DNVによるAM製造体制の認証取得に向け、藤沢工場の製造工程のデジタルデータ化を進めています。

今回の取り組みでは、製造装置から取得できるデータだけでなく、材料準備、作業確認、設備操作、検査など、人が実施する工程も含めてデジタル化します。

現在、主に次の3つの仕組みを構築しています。

  1. QRコードを利用した手作業工程のデータ化
  2. プロセスモニタリングによる造形工程のデータ取得
  3. すべてのデータを一つのBuild IDに紐づけて管理するソフトウェアの開発

目的は、単に記録を電子化することではありません。

一つのAM造形が、どの材料、設備、条件、作業、検査を経て製造されたのかを追跡し、品質証跡として説明できる状態をつくることです。

プロメシアンは、製造前・製造中・製造後の実データを統合し、モデルベースのAM品質保証インフラを構築することを事業の中核に据えています。

取付作業の記録も立派なプロセスモニタリング対象の1つ
取付作業も立派なモニタリング対象です。

なぜAM製造工程のデータ化が必要なのか

AM、すなわちAdditive Manufacturingでは、材料を積層しながら形状と材料特性を同時に形成します。

従来の切削加工では、あらかじめ製造された材料から不要部分を除去して形状をつくります。一方、AMでは、材料供給、エネルギー入力、加工速度、積層パス、姿勢、温度履歴などが、製造物の状態に直接影響します。

そのため、完成品だけを確認しても、製造工程全体を説明できるとは限りません。

例えば、同じ形状の部品であっても、次の条件が異なれば、製造結果が変わる可能性があります。

  • 使用した材料のロット
  • AM装置の状態
  • 電流・電圧や入熱条件
  • 材料供給速度
  • トーチやヘッドの移動速度
  • 製造パス
  • 作業者が実施した確認
  • 製造後の加工や検査
  • 製造条件の変更履歴

産業用途でAM製造品を使用するには、形状が完成しているだけではなく、どのような工程で製造されたかを説明できることが重要です。


1.QRコードによる手作業工程のデータ化

AM製造の品質は、装置が自動的に記録するデータだけで決まるものではありません。

製造現場では、材料の確認、設備の点検、ワイヤや粉末の交換、作業開始前の確認、加工後の外観確認など、多くの工程を作業者が実施します。

これらの情報が紙の記録、Excelファイル、口頭確認などに分散していると、後から一つの製造履歴として整理することが難しくなります。

そこで、プロメシアンでは各工程にQRコードを設定し、スマートフォンやタブレットなどから作業記録を入力できる仕組みを構築しています。

記録対象として、例えば次のような情報を想定しています。

  • 作業者
  • 作業日時
  • 対象工程
  • 使用した材料
  • 材料ロット
  • 使用設備
  • 作業前の確認結果
  • 作業後の確認結果
  • 異常の有無
  • 写真
  • 備考
  • 承認者

QRコードを利用することで、作業者は対象工程をその場で呼び出し、必要な情報を記録できます。

これにより、紙からデジタルへ置き換えるだけでなく、入力項目の統一、記録漏れの防止、作業時刻の追跡、写真との紐づけが可能になります。

QRコードを活用したプロセスモニタリング
QRコードを用いた作業者プロセスのモニタリングテストの様子

2.モニタリングによる造形工程のデータ化

次に進めているのが、AM装置の造形工程そのものを記録するプロセスデータのモニタリングです。

特にDEDやWA-DEDでは、エネルギー入力と材料供給を伴いながら、部品や基材上に金属を積層します。

造形中には、例えば次のような情報が発生します。

  • 電流
  • 電圧
  • ワイヤ送給速度
  • 移動速度
  • 積層パス
  • トーチ姿勢
  • 製造時間
  • 装置ログ
  • エラー情報
  • センサーデータ
  • 必要に応じた画像・映像情報

これらを取得することで、最終的な製造結果だけではなく、製造中にどのような状態でプロセスが進んだかを確認できるようになります。

ただし、データを取得しただけで品質保証が成立するわけではありません。

重要なのは、取得したデータから何を確認し、どの範囲を正常と判断し、どのような逸脱を記録するかを定義することです。

プロメシアンでは、モニタリングを単なるグラフ表示ではなく、将来的な工程安定性の評価、異常検知、品質リスク評価につなげるための基礎データとして位置づけています。

赤外線(IR)カメラによるプロセスモニタリングの様子
赤外線カメラによる温度場の取得

3.すべてのデータをBuild IDに紐づける

手作業の記録と、装置から取得したプロセスデータが別々に保存されているだけでは、製造履歴を一貫して追跡することは困難です。

そこでプロメシアンでは、一回の造形や製造単位ごとにBuild IDを付与し、すべての情報を一つのIDに紐づけて管理するソフトウェアを開発しています。

Build IDには、例えば次の情報を関連づけます。

製造前のデータ

  • 顧客・案件情報
  • 部品ID
  • 図面・CADデータ
  • 材料仕様
  • 材料ロット
  • 製造計画
  • 使用設備
  • 製造条件
  • 作業指示
  • リスク評価

製造中のデータ

  • 作業者記録
  • QRコード入力情報
  • 装置ログ
  • モニタリングデータ
  • 電流・電圧
  • ワイヤ送給速度
  • 移動速度
  • 製造パス
  • エラー・逸脱記録
  • 製造中の写真や映像

製造後のデータ

  • 外観確認
  • 寸法測定
  • フライス加工などの後加工記録
  • 材料試験
  • 非破壊検査
  • 断面観察
  • 検査結果
  • 判定結果
  • 承認記録

これらを一つのBuild IDに統合することで、

いつ、誰が、どの材料を使い、どの設備と条件で製造し、どのような検査結果になったのか

を一貫して確認できるようになります。


Build IDは製造履歴の「背骨」

Build IDは、単なる管理番号ではありません。

製造前、製造中、製造後に発生する情報をつなぐ、製造履歴の背骨となるものです。

例えば、検査で特定の結果が得られた場合、Build IDをたどることで、使用材料、製造条件、作業履歴、装置ログまで遡ることができます。

逆に、造形中に異常や条件逸脱が発生した場合には、そのBuild IDに紐づく後工程の検査結果や材料試験結果を確認できます。

この関係を蓄積することで、将来的には次のような活用が可能になります。

  • 製造条件と検査結果の関連分析
  • 異常発生時の原因追跡
  • 類似部品・類似条件との比較
  • 再製造時の条件再利用
  • 品質証跡レポートの自動生成
  • 工程変更時の影響確認
  • 顧客説明・監査対応
  • 品質判定支援
  • AIによる異常候補の抽出

プロメシアンが目指しているのは、単発の製造記録を残すことではなく、製造データと品質結果を継続的に蓄積し、再利用可能な品質保証基盤へ発展させることです。


AM造形体をフライス加工し、内部状態を確認

工程のデジタル化と並行して、実際のAM造形体の加工・評価も進めています。

今回、製造したAM造形体にフライス加工を行い、内部の状態を確認しました。

加工後の表面では、目視上、良好で均一な内部状態を確認することができました。

これは、造形後の外観だけでは確認できない内部状態を、後加工によって観察したものです。

一方で、この結果だけをもって、内部欠陥がないことや材料健全性が完全に確認されたと判断するものではありません。

今後、必要に応じて、次のような評価と組み合わせて検証を進めます。

  • 断面観察
  • 金属組織観察
  • 硬度試験
  • 引張試験
  • 化学成分分析
  • 非破壊検査
  • 寸法測定
  • 製造条件との比較

今回の加工結果は、今後の詳細な材料評価やプロセス検証につながる、前向きな初期結果と位置づけています。

20260625壁フライス加工 トレーサビリティテスト・DX

データと実物を結びつける

工程データを大量に蓄積しても、そのデータが実際の造形物の状態と結びついていなければ、品質保証には十分活用できません。

一方で、完成品の試験結果だけを蓄積しても、なぜその結果になったのかを工程側から説明することは困難です。

そのため、プロメシアンでは次の関係を重視しています。

工程データ

AM造形体

後加工・検査

材料特性・品質結果

この一連の情報をBuild IDによってつなぐことで、製造条件と製造結果の関係を分析できるようにします。

今回、AM造形体をフライス加工して得られた内部状態も、Build IDに紐づく品質情報の一つとして管理していきます。


DNV認証への対応だけで終わらせない

今回のデジタル化は、DNVによるAM製造体制の認証取得に向けた取り組みと並行して進めています。

ただし、目的は認証審査のために記録を整えることだけではありません。

認証取得後も、製造案件ごとにデータを残し、再現性を高め、顧客に品質を説明できる仕組みとして継続的に活用することが重要です。

プロメシアンは、QRコード、プロセスモニタリング、Build ID管理を組み合わせることで、製造記録を次の段階へ進めます。

  • 紙を電子化する
  • 情報を一つのIDに統合する
  • 製造条件と検査結果を関連づける
  • 品質証跡として出力する
  • 蓄積データを次の製造へ活用する

この循環を構築することで、AMを一回限りの加工ではなく、継続的に改善可能な製造プロセスへ発展させます。


「測れる・説明できる・再現できる」AM製造へ

プロメシアンが目指すのは、金属AMを単に形状をつくるための技術として提供することではありません。

製造工程を測り、
結果を説明し、
同じ品質を再現できる。

そのための工程データ、品質データ、管理ソフトウェア、運用体制を一体として構築しています。

これは、プロメシアンが掲げるReFunction:品質保証可能な再機能化を実現するための基盤でもあります。

製造前・製造中・製造後のデータを蓄積し、補修・再製作を「測れる・説明できる・再現できる」プロセスへ変えることが、プロメシアンの事業コンセプトです。

止められない現場から、再機能化のインフラをつくる。

今後も、認証対応、工程デジタル化、材料評価、ソフトウェア開発を並行して進め、AM品質保証の実装状況を発信してまいります。

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